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「アイネク」って

よく聞くタイトルだけど?!

 お陰様をもちまして、

​2016年8月7日に開催いたしました第1回公演は

満席のお客様とともに、私達自身も楽しいひと時を持つことができました。

 当日のお電話でお断りせざるを得なかった方もあり、せっかくお心にかけてくださいましたのに申し訳ありませんでした。

どんな内容だったか、ちょっとだけご紹介しておきましょう。

1曲目は、K.136

ディベルティメントの中では最も有名だろうと、

勝手に思っていますが、果たして真相やいかに。

 

2曲目は、K.173

ほとんど知ってる人はいないと思いますが、私にはなんだか、

珍しくモーツァルトが内心を さらけ出しているような曲に思えてならにのです。

それって実は、モーツァルトにはとっても珍しいこと...。

青年モーツァルトの、

若さ感じるフクザツな横顔に触れてみませんか?

「どこが?なんで?」と思う方はぜひ会場へ〜♪

 

3曲目は、通称『アイネク』

アイネ・クライネ・ナハトムジーク。

モーツァルトとといえばコレ、

という1曲と言っても過言ではないと思いますが、いかが?

ちゃんと番号も付けられています。K.525。

この曲は、見た目4パートの譜面なのですが、

モーツァルト自身の書いた譜面には一番低いパートの所に「Violoncello e Basso」と書かれているので、

ちゃんと5人で演奏します。

賛助出演は、コントラバスの大黒屋宏昌さんです♪

 

で、曲についての解説?

それが今回の「目玉」なので、

さすがにココで明かすわけには(^^ゞ

 

まぁ、こういうラインナップは

見た目なのん変哲もなく、

目新しいことも何もなさそうで、

なのに

なぜか何百年も続いてるスタイル...。

かび?

生えないんですよ、これが。

でも、

時にはもてはやされ、

時には飽きられ、

モーツァルトだって実は、そんなことに

一喜一憂する日々もあったのです。

 

とかなんとか、

私達のモーツァルト感もお話ししながらの会です。

​聴き逃してしまった方は是非、第2回からでもどうぞ ♪♪

 

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M.Shimazu-ludus.jpg

Program Note  森 あかね

1

2

​Divertimento K.136

モーツァルトの作曲したディヴェルティメントは、20曲以上ありますが、そのうち番号がついているものが17曲あります。これらはモーツァルトが15歳から24歳までに書かれたものです。第2番(K. 131, 1772)と第3番(K. 166, 1773)の間に、番号のつけられていない3曲のディヴェルティメントがあります。本日演奏される2曲のディヴェルティメントは、この3曲のうちの2番目(K. 137)と3番目(K. 138)の曲です。 

さて、ディヴェルティメントとは、どんなスタイルの音楽なのでしょうか。イタリア語の “divertire” 「楽しくさせる、気晴らしをさせる」を語源に持つ楽曲で、日本語では「喜遊曲」と呼ばれています。貴族の行事や食事の時などに演奏される明るい社交の音楽です。楽器編成は、弦楽三重奏、四重奏、または弦楽合奏とさまざまで、管楽器が入ることもありますし、管楽器だけの管楽合奏という編成もあります。演奏の形態も一様ではなく、それぞれの声部に一人の演奏者の場合もあれば、何人かのグループの場合もあります。本日のディヴェルティメントの楽譜には「Violini, Viole, Basso」とモーツァルトの直筆で書かれています。「Basso」の記述から、チェロだけではなくコントラバスも入り、弦楽合奏として演奏してもよいことがわかります。(コントラバスは、チェロと全く同じに弾いても良いし、部分的に弾いても良いようです。演奏者や指揮者によって異なります。) 今回の演奏は、もちろん、Ludus Quartetteによる弦楽四重奏の編成です。 現在、弦楽四重奏曲として演奏されている曲の中でも、楽譜に「Violini, Viole, Basso」と記されているために、ディヴェルティメントとして書かれたと言われている曲もあります。同じ頃に書かれた〈ミラノ四重奏曲〉の2番(K. 155)、5番(K. 158)、6番(K. 159)です。

Strings Quartet XIII "Wine-set"No.6 K.173

3

〈ウィーン四重奏曲〉は1773年の終わり頃に書かれました。すなわち前曲の〈ミラノ四重奏曲〉と同じ年に作曲されたものですが、 この9ヶ月間でモーツァルトの作風は、完全に古典派に移行しています。前回も触れましたが、〈ウィーン四重奏曲〉の6曲すべてが、すでに古典派の基本的な4楽章形式(テンポの速いソナタ形式の第1楽章、ゆるやかな第2楽章、メヌエット・トリオの第3楽章、ロンド形式などのテンポの速い第4楽章)になっています。これはハイドンの弦楽四重奏曲、Op. 9、Op. 17、Op. 20〈太陽四重奏曲〉の影響とも言えますが、当時のウィーンで、他の作曲家達も用いていた形式です。

モーツァルトの作品は、長調で書かれた曲数に比べ、短調の曲数が極端に少ないのが特徴です。四重奏曲のジャンルでも、全23曲の中で短調で書かれたものは、この第13番と第15番〈ハイドン四重奏曲 第2番〉の2曲のみです。どちらもニ短調で書かれています。この第13番は、クロマティシズムと頻繁な転調によって、全楽章を通しての統一性がもたらされています。

第1楽章は、ほぼ全体を通して短調で書かれています。第2主題も平行調のヘ長調には転調せず、属調のイ短調に転調しています。短調で始まった曲でも、すぐに長調に転調する傾向のあるモーツァルトとしては、珍しい楽章と言えるでしょう。また、前曲の〈ミラノ四重奏曲 第2番〉K. 156 の第1楽章と同様に、第2主題の提示後に、また第1主題が現れます。しかし、この楽章の場合は第1主題の変奏ではなく、第1主題と第2主題の組み合わせとして現れています。そして、コーダの部分(第119小節目から第136小節目)では、第1主題と第2主題のモチーフが交互に現れ、モーツァルトの技巧に圧倒されます。

第2楽章はロンド形式で書かれています。冒頭の8小節のテーマ(リフレイン)が、異なるテーマを持つセクションを挟み、繰り返し演奏されます。すなわち、この楽章の構造は A B A C A D A E A B となります。冒頭のA B と終わりの A B が全く同じであることから、このロンドは古典派のロンド形式(rondo)と言うよりは、中世、ルネッサンス期のフランスの詩の形式に基づいたロンド形式(rondeau)に近いものです。この楽章は終わりの A B の後、4小節の終止部がありますが、かなり尻切れとんぼの終わり方です。ここに、ロンド形式の本当の意味を踏まえ、循環する音楽を書こうとしたモーツァルトの意思が感じられます。 

メヌエット・トリオの第3楽章もまた、ニ短調で書かれています。この楽章でも、冒頭13小節間における転調の早さが際立っています(ニ短調−変ロ長調−イ短調)。第4楽章もニ短調で、ほぼ完全な半音階の主唱を持つフーガの楽章です。この主唱によるクロマティシズムは、ストレットの多用により、さらに強調されています。この楽章におけるモーツァルトのフーガの技巧は、バッハを彷彿とさせます。そしてこのフーガは、モーツァルトのバロック時代への決別の言葉なのかもしれません。

"Eine kieine Nachtmusik" Serenade No.13

〈アイネク〉の愛称で親しまれているこの曲は、おそらくモーツァルトの作品の中で、最も有名な曲の一つでしょう。〈アイネ・クライネ・ナハトムジーク〉とは、「小さな夜曲」という意味で、〈セレナーデ第13番〉です。(番号のついているモーツァルトのセレナーデの最後の曲です。) セレナーデとは、 ご存知のように、男性が女性の住む家の窓の下で、その思いを奏でる音楽のことでしたが、モーツァルトの時代では、室内楽曲を意味します。ディヴェルティメントと同じように、楽器編成は自由で、また楽章の数もまちまちです。セレナーデの中で、おそらく〈アイネク〉の次に有名な〈セレナーデ第7番 ハフナー〉(Haffner Serenade K. 250, 1776) は8楽章からなっています。

 

〈アイネク〉がどのようないきさつで、誰のために書かれたかは、未だに明らかになっていませんし、初演に関する資料も見つかっていません。しかし、モーツァルトの自作目録・第63番に、モーツァルトの直筆による情報が少し残されています。作曲した場所と日付は「ウィーン1787年8月10日」と記されています。この頃、モーツァルトは、オペラ〈ドン・ジョヴァンニ〉の第2幕を作曲していました。父、レオポルドが亡くなって(1787年5月28日)間がなく、遺産相続について姉ナンネルと交渉を続けていた頃です。あまり、作品にタイトルを付けることのなかったモーツァルトですが、この目録には〈Eine Kleine Nacht Musik〉とはっきり書かれています。楽器構成も「2 Violini, Viola, Bassi (Basso の複数形)」と明記してあります。そして、現在の〈アイネク〉は4楽章からなっていますが、目録では「Allegro, Menuetto und Trio, Romanze, Menuetto und Trio, Finale」と5楽章形式として記録されています。つまり、2楽章目に、もう1つのメヌエットとトリオ が存在していたわけです。音楽学者のアルフレッド・アインシュタイン (Alfred Einstein) は、〈ピアノ・ソナタ 変ロ長調、K. 498a 〉のメヌエットとトリオが、この失われた2楽章だと言っています。このソナタは、モーツァルトの〈ピアノ・ソナタ 第20番〉として1798年に出版されましたが、実はアウグスト・エベルハルト・ミュラー (August Eberhard Müller 1767-1817) の作曲であることがわかっています。 しかし、このソナタのメヌエットとトリオだけは、モーツァルトの作曲によるもので、しかも〈アイネク〉の謎の2楽章だという説は、完全に否定されていないようです。この目録は、現在、大英博物館が貯蔵していて、インターネットで公開しています。興味のある方は見てみて下さい。一番下の段です。

 http://www.bl.uk/onlinegallery/ttp/mozart/accessible/pages5and6.html#content

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