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Yokohama, Japan
Ludus Quartett
since 2010
〜Ludus Quartett 秋公演 2021〜
第4回 古典の名曲
クーポンの発行はありません
悪しからずご了承ください
2021年10月9日(土)
14時 開演 4000円
鎌倉生涯学習センター(きらら鎌倉)ホール
JR鎌倉駅東口より徒歩3分
ベートーヴェンは2020年12月に生誕250年を迎えました。Ludusはこれまでに、モーツァルトの弦楽四重奏を全曲演奏し、その後はハイドンとベートーヴェンも交えて構成してまいりましたが、今回は初めて、ベートーヴェンのみ!
今回選んだ2曲のうち、最初に演奏するのは作品18-5。快活さに溢れ、終楽章にはお得意のフーガも用いられている、比較的初期の力作です。
そして2曲目は、作品131。晩年の作品になりますが、
今曲を書き終えたベートーヴェンは、友人への手紙の中に「私にまだ、こんなに創作のアイデアがあったとは!」と書き送っているほど、会心の出来だったようです。手強くも楽しく、ベートーヴェンならでは一曲です。
曲目
L.v.ベートーヴェン
弦楽四重奏曲 第5番 イ長調 Op.18-5
L.v.ベートーヴェン
弦楽四重奏曲 第5番 嬰ハ短調 Op.131
毎年冬に開催される
『山手芸術祭』に参加して参りましたが
残念ながら2021年2月はコロナで中止でした。
また再開されますようにと願っております。
そのような経緯もあり
また、客席の空間に余裕のある場所で
という思いもあって、
今回は会場を鎌倉に移して開催いたします。
お誘い合わせいただけましたら
なお幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
Program Note
Akane Mori
弦楽四重奏曲 第5番 Op. 18 - 5 (1798-1800) イ長調
Ludwig van Beethoven
本日演奏される弦楽四重奏曲第5番(作品番号18)は、ベートーヴェンが初めて作曲した弦楽四重奏曲セットの中の一曲です。ベートーヴェンはその生涯に16曲の弦楽四重奏曲を作曲しましたが、ハイドンやモーツァルトが行っていた六曲を一つのセットにするという当時の慣習に従って書かれたのは、この作品番号18の六曲だけです。このセットは、ベートーヴェンを最も援助したパトロンの一人、ヨゼフ・フォン・ロプコヴィッッツ侯爵に献呈されています。ベートーヴェンは交響曲第3番、第5番、第6番、弦楽四重奏曲10番も、この侯爵に献呈しています。この弦楽四重奏曲セット内の番号(1番から6番)は出版社が決めたもので、実際に作曲された順番は3番、 1番、2番、5番、4番、6番なので、この曲は四番目に作曲されたことになります。
第1楽章は、古典派のソナタ形式を踏襲しています。安定したイ長調の第一主題で始まりますが、ホ長調であるべき第二主題は、なかなかその調に到達しません。しばらく、ホ短調が続きます。このように、長調と短調の間を何度も行き来することが、この楽章の魅力となっています。第2楽章はシンプルなメヌエット・トリオです。通常、この形式の楽章は第3楽章として作曲されることが多いですが、第3楽章が5つの変奏曲からなる長い楽章になっているため、第2楽章として書かれています。この変奏曲からなる第3楽章は、ゆったりと静かなテーマで始まりますが、第5変奏曲では第1ヴァイオリンのトリルとチェロのアルベルティ・バスによって弾けるような雰囲気になり、突然、変ロ長調に転調しフィナーレへと向かいます。第4楽章もソナタ形式で書かれています。八分音符の短いモチーフが連なってできている第一主題と、対照的に全音符4つで始まる第二主題が、展開部で見事に結合します。ベートーヴェンは、モーツァルトの弦楽四重奏曲第18番(ハイドン四重奏曲第5番)K.464をモデルにしているようで、調性と楽章の構成が酷似しています。モーツァルトの弦楽四重奏曲第18番もイ長調で書かれていて、第1楽章と第4楽章がソナタ形式、第2楽章がメヌエット・トリオ、第3楽章がテーマと7つの変奏曲からなる広大な楽章です。
弦楽四重奏曲 第14番 Op. 131 (1826) 嬰ハ短調
Ludwig van Beethoven
ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲と呼ばれている曲は作品番号127、130、131、132、133(大フーガ)、135の6曲です。そのうち、作品番号130、131、132の実際に作曲された順番は132、130、131で、ABC弦楽四重奏曲と呼ばれることがあります。これはこの3曲の調性がイ短調(a moll)、変ロ長調(B dur)、嬰ハ短調(cis moll)だからです。
本日、演奏される第14番(作品番号131)は、ベートーヴェンが、自らの体調不良と甥のカール(Karl van Beethoven)の自殺未遂事件に悩まされていた1825年11月から翌年の7月にかけて作曲されました。作曲家自身が各楽章に番号をつけたために7楽章編成となっていますが、実際には第3楽章(11小節)と第6楽章(28小節)は極端に短く、それぞれ次の楽章の序章のようです。各楽章間に終止線はなく、全楽章を続けて演奏するように、各楽章の終わりに次の楽章の調号と拍子が書かれています。第1楽章から第6楽章まで、すべて異なる調が使われていますが、最後の楽章は最初の楽章と同じ嬰ハ短調で書かれていて、ベートーヴェンがこの曲の全体性を求めいたことがわかります。
第1楽章は嬰ハ短調の重々しいフーガで始まります。このフーガはバロック時代のフーガとは異なり、応唱が完全4度上に現れ、かなり調性が曖昧です。第2楽章は、半音上がり、対照的にはっきりとしたニ長調で、拍子も8分の6拍子に変わります。第4楽章はテーマと7つの変奏曲*による、最も長い楽章で、この曲の中心部です。変奏曲の一つ一つがかなり違って聞こえるのはメロディーにおける楽器の割り当て方、楽器間の掛け合い、奏法、リズム等多様を極めているからです。4つの弦楽器が造り得る異なるテクスチャーを試しているようで、さまざまな色合いが広がり、弦楽四重奏曲の醍醐味と言えるでしょう。第5楽章は2分の2拍子ですが、スタイルとしてはスケルツォとトリオで、躍動感に溢れています。この楽章の終わりにテーマがスル・ポンティチェロ(sul ponticello 駒の近くを弾く奏法)で奏でられます。第7楽章は、ソナタ形式ともロンド形式とも考えられます。主題は2つしかなく、調性関係も古典派にのっとっているのでソナタ形式のようですが、この2つの主題が原型で何度も繰り返されるために、ロンド形式とも言えます。この楽章は、調性だけでなくフーガも現れ、第1楽章との対称関係を作っています。この楽章で現れるフーガは主唱が2つある二重フーガです。最後の楽章にふさわしい包括的な楽章です。
シューベルトが亡くなる前に最後に聴きたいと言った曲が、この曲だと言われています。
*ジョゼフ・カーマン(Joseph Kerman)という音楽学者の説のように、6つ半の変奏曲とコーダという考え方もあります。
森あかね