2001年結成の演奏家団体『たのシック』
高齢のご家族と一緒に楽しむ生演奏
『ホームコンサート』
クラシック、タンゴ、映画音楽、童謡、思い出の曲など
プログラムは〔一緒に作るコース〕〔おまかせコース〕からお選びいただけます
Ensemble Tano-chic
音楽で 粋なひと時を愉しむ
本日はご来場ありがとうございます。
このシリーズでは、文化と芸術の交差点を黙々と考えている私の頭の中を
ちょっとだけ、
この場を借りてご紹介いたします。
今回、芸術と文化の交差点としてスポットを当てたのは
『紙』
音楽家にとって必要不可欠な楽譜。
とうとう、その媒体が紙からデータへ、という大変革をとげていますが、
そんな、消えゆきそうなモノに少しスポットを当ててみました。
現在、普通に気楽に使っている紙を洋紙とも言うのだそうですが、
その歴史は、生活と直結する様々な文明の変化に伴って大きく変わり、
量産出来るという利点で私たちの生活を支えています。
量産前の
バッハの時代の紙は、木綿や麻などで出来た布の再利用、つまりボロ布からのリサイクル!
ただ漂白して白くしたものなので、経年変化とともに黄ばんできます。
漂白していないタイプの和紙は、元々真っ白ではないけれど、黄ばむこともないそうです。
(本日のプログラムは残念ながら漂白されたものになります)
作曲家の書いた直筆譜の大半はすでに黄ばんでいますが、
現在では近年の技術で、画像データ内の黄ばみを取り除いて読み易くして出版したもがあって、
読み易くて驚きました!(本日の受付に展示しています)
ほんのひと昔前は、基本的には現地に行って、面倒な手続きをして、ようやく見せて貰える物。
黄ばんだままの画像で「ファクシミリ譜」として出版された物を見れるだけでもありがたく、
それもかなり高価でしたが。。
洋紙が日本に伝わったのは明治になってからで、
ヨーロッパでの製紙技術が量産できるところまで達している状況、
つまり工業化された技術として伝来しました。
でもきっと、墨汁との相性も悪く、
ペンも
インクも、と、
「書く」ということの大変革だったのだろうと思います。
一方和紙は、
障子や襖といった建具にまで紙を使っている日本にとって、
無くなるはずもないモノであり、近年ではその強さと美しさで
内外を問わず多くの芸術作品や芸術的工芸品が生まれていると思います。
楽譜は、
活版印刷と紙の量産技術のお陰で、
その音楽を育んだバックグラウンドから切り離されるほど遠くまで届きます。
私達音楽家にとっては、その印刷物からその作品の奥深くを探り始める入り口で、
例えてみれば、「どこでもドア」ならぬ「音楽への扉」そのものです。
「紙」という一文字でしか交わっていないほど、作り方も用途も何もかもが異なる洋紙と和紙ですが、
今日はプログラムというものを介して、和紙もこの音楽空間に用いてみました。
伝統工芸品であっても必ずしも全てが異常に高価なわけではありません。
身近に親しんでこそ、という思いもあり、
いろいろな工芸品についての動画の入り口となるカードもお席にご用意させていただきました。
長いものを読んでくださり、
ありがとうございました。
たのうち惠美